気読はいつも列車内で彼女に「由梨子さん・・・・・」と話かけることを願って
いた。
そんなある日、気読はとうとう・・・・
いつものように帰りの列車で、気読はついに由梨子の隣に座ったのだ。
そして次のY駅で、前の二人が下車し、ボックス内が二人だけになった。 そこで、気読は勇気を奮い起こして、彼女に声をかけた。
「吉沢由梨子さんですね。」
彼女は気読の方を見て笑み「どうして分かったの?」
次の瞬間、気読は後の言葉が出て来なくて、頬を真赤に紅潮させた。
また、いつもの癖が出てしまった。
気読は自分の赤面恐怖症を悲しく思った。
由梨子はそんな気読を見てこう言った。
「あら、純真なのね。」
その時、「気読!」「気読!」という声、
車窓から母の顔が覗いていた。
「気読、学校遅れるよ。」
ハッと目が覚めてしまった。
残念な気がした。夢だったのだ。
もう少しのところまで、行ったのに。
気読は布団の上に座って、今の夢を思い起こし、正夢になるように・・・・
と祈った。
でもまた思うのは、逆意気読という自分の名前だった。
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