気読は、由梨子と出会うまでは男の中でも勇気がある方で、顔も悪くは無いと
思っていた。
しかし、今までのことや今日列車であったことを考えると、自分は何てだらしが
無いんだろうと思わない訳にはいかなかった。
自分の責任だ、親に当たってみたところで、始まらない。
今朝の列車内はいつもより、非常に混んでいた。
ようやく車両の中に入れたが、強い圧迫荷重を感じた。
しかし、彼女の姿は逃がさなかった。
こんなふうに混んでくると、体が傾いたりカバンを持った手が自由にならなくて
苦しいものだ。
今日はそんな状態だった。
気読はようやく網棚にカバンを上げることが出来た。
由梨子はいつものように友達と一緒だった。
こんな時位、背が小さいとみじめなことは無い。
二人とも苦しそうだ、カバンを持っているので、さらに辛いようだった。
「カバン落ちそう!!。」「あたしも!!」
なんて、話している。
「カバン、網棚に上げましょうか?」
こう言いたい、気読の胸は高鳴るのであった。
しかし、言葉に出すことは出来なかった。
ぐずぐず考えているうちに、列車はKY駅に着いてしまった。
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