もうわずかな日、学校に行くだけで夏休みを迎えようとしていた。
毎日快晴だったが、依然として気読の心はすぐれなかった。
このままでは、暗い夏休みになってしまう。
何とか夏休み前に手を打たなくちぁ。
その日の列車は混んでいた。
,熱気がムンムンして息苦しかった。
列車が動き出すと、窓側は少し涼しくなった。
由梨子は外側に出られなくて、暑そうにしていた。
かわいそうに、こういう時、小さいとみじめだなぁ・・・でも僕には
どうしてやることも出来ない・・・もっと勇気があったらなぁ。
気読はいつもと同じ事を考えていた。
2−3人の高校生が、必要も無いのに、ギューギューと押していた。
皆迷惑そうにしているが、何も言わない。
気読もいつも黙っているが、その時、彼の目に苦しそうにしている由梨子の
姿が入った来た。
気読は思わず叫んでいた。
「むやみに押すな!!」
すぐに、あぁと思った。その高校生達が気読をにらみつけたのだ。
やっぱり黙っていれば良かった。世間では小暴力反対とか言っているが、
現実には皆、見て見ぬふりをしているでは無いか。
しかし、気読の目に彼女の姿が入った時、そんな思いは消えていた。
僕は正しい事をしたんだ。
Y駅に着いた。
先ほどの3人が、「降りろ」と言い寄って来た。
気読は黙って付いて行った。
3人が気読を取り囲んだ時・・・・駅員が駆けつけて来た。
・・・そして、3人は連れて行かれた。
やっぱり正しい人もいるんだ。
しかし、駅員に通報したのが、由梨子だったとは、気読は気が付かなかった。
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